最終更新日2024年6月4日
スクリーンメッシュと聞くと、聞きなれない人も多いのではないでしょうか。
本記事では、そのスクリーンメッシュの特徴や役割について解説していきます。スクリーンメッシュが何か気になる・使用方法がわからないといった人は、参考にしてみてください。
スクリーンメッシュとは、スクリーン印刷に使用される、繊維で織られた細かい網目の素材のことをいいます。インクを素材へ転写するための重要な役割を担っている素材で、Tシャツにイラストやロゴなどを転写する際にも使用されます。
スクリーンメッシュの素材には、樹脂性(ポリエステル・ナイロンなど)や金属性(ステンレス・タングステンなど)が使用されており、規格や素材など、適したメッシュの種類は目的によってさまざまです。ホームセンターでも販売されており、趣味にも用いられる身近な素材ともいえます。
スクリーン印刷とは、孔版印刷(版に穴をあけた部分からインクを擦り付ける印刷方法)の一種です。ステンシルや着物の友禅染めの手法や技術がスクリーン印刷のもとになっているといわれており、昔はシルクが使用されていた(シルクスクリーン)ため、スクリーン印刷の総称を、現在でもシルクスクリーンとよぶことがあります。
スクリーン印刷は、メッシュの素材を目的によって変えることで、ガラスやプラスチック、金属に布生地など、固さや凹凸問わず、さまざまな素材へ印刷できるのが特徴です。
近年では、技術の進歩によって、人間の髪の毛の直径(60〜80μmが一般的)よりも小さいわずか10μmほどの精細な配線も印刷可能になっています。そのため電子部品の製造にも用いられており、微細チップ内部の電極は、スクリーン印刷によって形成されるものが多いほどです。
ここからは、スクリーンメッシュの特徴を解説していきます。
スクリーンメッシュの織り糸には、複糸(複数の糸を撚ってできた糸)で織ったマルチ紗と、単糸(針金のような一本の糸)で織られたモノ紗の2種類があります。
マルチ紗に比べるとモノ紗の方が一本の糸なため、インキが通りやすく詰まりにくい・伸長性が安定しているとされるのが一般的です。マルチ紗は、インキが滲みやすい薄い生地といったものに、インキの付着量を抑えるのに使用されることもあります。
スクリーンメッシュの紗の織り方は主に平織りが採用されています。その糸と糸との間隔を表す単位がメッシュです。1インチ(25.4mm)の中に、何本糸が打ち込まれているかで、紗の細かさを示しています。
線径は、糸の太さを表しており、単位はμm(1ミクロン=0.001mm)です。
開口率(オープニングエリア)は、紗の孔の寸法になります。紗の孔の寸法を率で表したものが開口率で、計算方法は「(オープニング)^2÷(オープニング+線径)^2」です。
率ではなく、紗の孔の寸法の計算方法は、ミクロン単位の式で、オープニングエリア=25400μm ÷ メッシュ数ー線径になります。オープニングエリアは、同じ素材のメッシュであっても糸の線径が違えば広くなったり、小さくなったりするのが特徴です。
糸と糸が交わった部分の厚み(μm)が紗厚です。紗厚は、糸と糸が交差した高さになるので、単純計算で線径の2倍が目安になります。正確な紗厚が知りたい場合は、スクリーンメッシュを製造している各メーカーに確認するようにしましょう。
スクリーンメッシュに使用される代表的な種類は、ポリエステル・ナイロン・金属の3種類です。それぞれを見ていきましょう。
一口にポリエステルメッシュといっても、スタンダードなポリエステルや高強度ポリエステル、芯には超高強度ポリエステルで、鞘には高弾性ポリエステルと性質の違うポリエステルを組み合わせたメッシュがあります。
用途もさまざまで、ガラスや車載パネル、捺染や陶器、太陽電池などに使用されます。
ナイロンメッシュは、ナイロン単体のものや、ナイロンとポリエステル複合糸で作られたタイプがあります。曲面印刷やプリント基板、ステッカーなどに使用されます。
ステンレスやタングステンが使用されたメッシュは、太陽電池やプリント基板 セラミックパッケージにチップ部品といった、工業用品に多く用いられます。
スクリーン印刷における、スクリーンメッシュの役割は、以下の通りです。
印刷を成功させるためには、画像通りに焼き付けされた感光性乳剤を保持し続けなければなりません。また、印刷過程でメッシュがズレたり変形してしまうと、画像自体が変形してしまうので、メッシュの丈夫さも重要です。
スクリーン印刷では、スキージ移動に合わせてスクリーンマスク(フレーム・メッシュ・感光材・ポジフィルムで構成されている)と基板が連続して版離れをします。この版離れには、メッシュの張力が重要です。張力が高ければ高いほど、版離れが向上するため、印刷の品質が高くなります。
スクリーン印刷は、スクリーンメッシュの開口率や厚みを調整することで、インキの吐出量をコントロールすることができます。
スクリーンメッシュの目が細かければ細かいほど、印刷の解像度が高くなります。反対にスクリーンメッシュの目が粗ければ、印刷解像度が下がるので、メッシュの目を調整すれば好みの印刷解像度を実現できます。
スクリーンメッシュは、スクリーン印刷において重要な役割をになっています。メッシュの素材を目的に合わせて選ぶことで布生地など、凹凸を問わずに印刷できるため、現在では電子機器の微細チップ内部の電極にも採用されているほどです。スクリーン印刷は身近な便利アイテムにも多く採用されているため、それに必要なスクリーンメッシュも、便利な生活を送るためには、欠かせない素材といえるでしょう。